私の研究室の究極のゴールは「社会の持続可能性に貢献する」です。IoT端末、AI用LSI、パワー半導体用ドライバICなどの集積回路の出荷量年々増加しています。これに比例して集積回路の総消費電力が増加しています。社会の持続可能性のためにはこれを抑えなければなりません。そこで私の研究室では回路レベル・システムレベルの消費電力を抑える「グリーン化設計技術」の研究開発を行っています。

IoT用集積回路の場合を説明します。環境の温度変動や振動状態をセンサーでモニターをして、結果を不揮発性メモリに記憶しています。定期的に無線通信機で情報をクラウドに送受信します。商用電源のない場所ではバッテリの代わりに環境エネルギーを電力に変換する発電素子を使います。発電素子から得られた電力を電力変換回路でセンサーモジュールに電力供給します。緑色で書いた部分が「高エネルギー効率の集積回路設計の要素技術」を示していて、この開発に貢献することで、「社会の持続可能性に貢献」します。

研究のご褒美は、たまに感動する瞬間があることです。例えば、回路の面白いアイデアを思い付いたときです。過去の文献を調べてそのアイデアがないとき、特許や論文の種となります。そのアイデアを回路に具体化して、その設計データをファブに送信終了したときは、一旦設計終了になります。「やったー」という気分です。自分が設計した回路を自分で測定して、シリコンで動作を確認したときは「よっしゃー」と言葉で出てきます。たまに訪れるこのような感動を経験できると、「研究は楽しい」となります。研究室の学生たちにもこのような感動を一つでも多く経験してほしいと思っています。
